東京地方裁判所 昭和31年(ワ)5159号 判決
原告 王子信用金庫
被告 三上豊蔵
主文
被告は原告に対し、金百十五万円及びこれに対するうち金四十万円については昭和二十九年五月十四日から、うち金二十万円については同年二月二十五日から、うち金十五万円については同年三月十六日から、うち金四十万円については同年四月五日から、いずれも支払ずみまで日歩六銭の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
本判決は仮に執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、
一、原告は被告に対し左記のとおり金銭の貸付をなし、いずれも利息は日歩四銭五厘(期間中支払ずみ)、期限後の損害金を日歩六銭と約した。
貸付金額 貸付年月日 弁済期日
(イ) 金四十万円 昭和二十八年十二月二十四日 昭和二十九年二月二十一日
(ロ) 金二十万円 昭和二十九年一月二十五日 同年二月二十四日
(ハ) 金十五万円 同年二月七日 同年三月十五日
(ニ) 金四十万円 同年三月五日 同年四月四日
計金百十五万円
二、しかるに被告は(イ)の貸金に対する昭和二十九年五月十三日までの損害金を支払つたほか、爾余の元金並びに約定損害金の支払をしないので、本訴請求に及ぶ次第である。
と陳述した。
被告は適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、かつ、答弁書その他の準備書面をも提出しない。
理由
被告は原告主張の請求原因事実を明らかに争わぬからこれを自白したものとみなすべく、右事実にもとづく原告の請求は正当であるからこれを認容すべきところ、本件は督促手続として進行し、右原告の請求(ただし後記請求の減縮前)につき東京北簡易裁判所において仮執行宣言付支払命令が発せられ、これに対し、昭和三十一年五月二十九日被告から適法な異議申立のなされたことは本件記録上明白であり、原告は本訴口頭弁論において前記事実摘示のとおりにその請求を減縮したものである。
このように仮執行宣言の附された支払命令に対し異議の申立がなされた場合その宣言前の異議申立と異り支払命令の効力は依然として存続するから、上訴の場合に準じ支払命令に対する異議の当否が審判の対象となると解する余地もあるが、異議が適法と認められれば、仮執行宣言前ならば支払命令は失効し、又その前後を問わず督促手続は判決手続に移行し、仮執行宣言後ならば仮執行宣言付支払命令の執行力が存続する(裁判所は申立により執行停止の仮の処分を命ずることができる。)が本案判決あるときに失効すると解せられるから、仮執行宣言の前後に関せず、異議申立後の審判の対象は常に原告の請求の当否であると考えるのが相当である。
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 田中恒朗)